経営者の皆さん、「日当非課税」という言葉を耳にしたことはありますか?
日当とは、出張中に発生した交通費や宿泊費以外の費用を指し、会社の旅費規程に基づいて社員に支払われるものです。
この制度は、従業員に所得税や住民税を課されないため、従業員にも大きなメリットがあります。
今回は、この制度を活用して節税する方法と留意点を解説します。

日当非課税でどのように節税するのか?

出張で発生する費用には、交通費、宿泊費、日当の3つがあります。
交通費は電車代や新幹線代、バス代、タクシー代など、宿泊費はホテル代、そして日当は出張中の食費や雑費などを指します。
これらの費用を実費精算ではなく概算精算することで、節税が可能となります。

会社ごとに概算精算の範囲は異なります。
例えば、交通費を実費精算し、宿泊費と日当を旅費規程に基づいて支給する会社もあれば、日当のみを規程に基づいて支給する会社もあります。
重要なのは、概算で支給される金額は給与所得とみなされない点です。
これにより、従業員に所得税がかかることなく満額を受け取ることができます。

具体例として、ある会社が交通費を実費精算し、宿泊費と日当を1万円支給する場合を考えてみましょう。
従業員が5千円のホテルを予約した場合、残りの5千円は非課税で受け取ることができます。
会社にとっても、1万円を消費税課税取引として経費計上できるため、給与として支給するよりもメリットがあります。
社会保険料の節約にもつながります。
この制度は、大企業だけでなく小さな会社でも活用できるため、よく取り上げられる節税策です。

なぜ日当が非課税になるのか?

日当が非課税とされる理由は、所得税法第9条第1項第四号に規定されています。
この条文によれば、職務遂行のための移動に必要な出費は非課税とされるのです。

根拠条文(所得税法第9条第1項第四号)

”給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの。”

ここで、「旅行」というのは、遊びに行く旅行ではなく他の勤務地に行くことを指しますので、簡単に言えば、職務遂行のための移動に必要な出費は非課税となるということを示した条文です。
そして、日当についても職務遂行するための移動に必要な費用としてみなされるため、所得税法上は非課税として取り扱われるのです。
ただ、特定の役員や従業員だけを優遇したり、同業他社に比べて多額な日当を設定することは許されてはおりません。
それを規定した根拠が次の通達になります。

根拠条文(法令解釈通達9-3)

”法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。”

旅費規程を整備しなければならない理由がここにあるのですが、役員、使用人に支給する額が、日当の支給額が会社全体で適正なバランスが保たれていること、同業他社と比較して相当な金額であることが求められています。
このため、会社は旅費規程を整備し、適正な金額を支給する必要があります。
但し、旅費規程があればなんでも大丈夫というわけではなく、通常必要とされる支出でなければなりません。
この要件さえ満たせば日当非課税として認められるのですが、「通常必要とされる支出」の範囲が、税務調査で問題になることがあります。

税務調査で修正申告が必要となった場合の影響

もし税務署から日当ではなく給与として計上すべきと指摘を受けた場合、会社には大きなペナルティが課される可能性があります。
過去の日当支給額が給与課税となり、源泉所得税の徴収漏れや消費税の納税漏れが指摘されるでしょう。
これに対しては、不納付加算税や過少申告加算税が課されます。
過去数年間が遡られるため、従業員数が多ければその影響はさらに大きくなります。
このようにリスクが伴う節税策ではありますので、注意深く運用することをお勧めします。