会社設立し、経営を成功に導くには、8つの重要な決定事項(商号、目的、本店所在地、資本金、株主、役員、機関設計、事業年度)を慎重に考慮する必要があります。
これらの基本事項をしっかりと決定することで、会社の基盤を固め、順調なスタートを切ることができます。
ここでは、会社設立時に決めるべき重要事項と、それぞれの注意点について分かりやすく解説します。
商号(会社名)
まず最初に決めるべきことは商号(会社名)です。
会社名はビジネスの顔となり、ブランドイメージを形作る重要な要素です。
多くの方は、すでに何らかのイメージを持っているかもしれませんが、他社と混同されないユニークな名称を選ぶことが重要です。
想像以上に多くの会社が存在するため、国税庁の法人番号公表サイトで候補となる会社名を検索してみることをお勧めします。
同じ名前を使用すること自体は問題ありませんが、本店所在地の近くに同じような名前の会社がある場合は、再考することを考慮しましょう。
目的(事業内容)
事業内容の決定は、会社の活動範囲を決めるために非常に重要です。
まず、事業内容は具体的かつ明確に記載する必要があります。
曖昧な内容だと、銀行口座の開設や許認可取得時に問題が発生する可能性があります。
また、今すぐ行う予定がない事業でも、将来行う可能性があるものについては事業目的に含めておくと良いでしょう。
これにより、将来的な事業展開がスムーズになり、改めて定款を変更する手間を省けます。
ただし、事業目的を多くしすぎると、何をする会社なのかが不明瞭になってしまう恐れがあります。
ある程度絞った方が、会社のイメージが明確になり、取引先や顧客にも理解されやすくなります。
さらに、許認可が必要な業種の場合、事業目的に適切な記載をしないとライセンスを取得できないことがあります。
特定の名称を使用しないといけない場合もあるため、事前に必要な条件を確認し、適切に記載することが重要です。
例えば、派遣事業を開始したい場合は、「労働者派遣事業」と目的に記載しないと受け付けてもらえません。
「労働派遣業」でも「一般労働者派遣業」でも許認可を受けることはできません。
必ず、「労働者派遣事業」と目的に記載しなければなりません。
本店所在地
本店とする場所は基本的にはどこでも構いません。
ただ、一つ注意が必要なのは、シェアオフィスを本店所在地とする場合です。
シェアオフィスの利点は数多くあります。
まず、低コストで利用できる点が挙げられるでしょう。
初期費用やランニングコストを抑えることができるため、特に資金に余裕のないスタートアップ企業にとっては大きな魅力です。
また、柔軟な契約形態や、共有スペースを通じたネットワーキングの機会も多く、ビジネスの発展に寄与する可能性があります。
しかし、シェアオフィスを本店所在地に選ぶ際には、銀行口座の開設が難しくなることがあります。
銀行は、会社の実態や信頼性を重視するため、シェアオフィスの住所では審査が厳しくなることがあるのです。
銀行は、会社の信頼性を確認するために、実際にオフィスを訪問することがあります。
シェアオフィスの場合、他社と共有しているスペースであるため、信頼性の確認が難しくなることがあります。
シェアオフィスを選ぶ際には、銀行口座の開設に必要な書類や手続きについて事前に確認し、対策を講じておくことが重要です。
出資金
出資金の金額は、会社の信用度や初期の事業活動に大きく影響します。
事業計画に基づいた適切な資本金を設定し、初期の運転資金や設備投資に必要な金額を確保することが重要です。
運転資金が要らないというケースもあろうかと思いますが、資本金が少なすぎると銀行口座の開設や取引先からの信用度にマイナスの影響を与える可能性があるため注意が必要です。
さらに、資本金の金額には税務上の注意点もあります。
資本金が1,000万円を超えると消費税の課税対象に無条件でなるため、慎重に検討する必要があります。
この点、インボイス登録をするかしないかの意思決定も必要になるので、専門家に相談することをお勧めします。
資本金が3,000万円や1億円を超えると、さらに税制上の優遇措置が変わってくるため、これらの壁を意識して計画を立てることが重要です。
資本金の設定には、将来的な成長や拡大を見据えた戦略的な判断が求められます。
このように、適切な資本金の金額を設定することで、会社の信用度を高め、円滑な事業運営を実現することができます。
株主(出資者)
株主は会社のオーナーであり、会社の方向性や重要な意思決定に影響を与えます。
そのため、株主を決める際には、出資比率のバランスを考えることが重要です。
一人で立ち上げる場合は一人が全株主を有することになりますが、共同で会社を設立する場合には、特定の株主に権力が集中しないように配慮し、信頼できる人を選びましょう。
また、将来の資金調達のために、新しい株主を迎える可能性も視野に入れておくことが大切です。
役員
役員は会社を実際に運営する人々であり、その選定は会社の成功に直結します。
一人で会社を立ち上げ、一人代表の会社であればあまり考えることもありませんが、複数の役員を選ぶ際には、会社の事業内容に合った知識やスキルを持つ人を選ぶことが重要です。
また、役員は会社の顔となるため、信頼できる人物を選び、不正行為や利益相反のリスクを避けるようにしましょう。
多様なバックグラウンドや視点を持つ役員を選ぶことで、より創造的で効果的な経営が期待できます。
機関設計
機関設計とは、会社の内部組織やガバナンス体制を決めることを指します。
会社の規模に応じて、取締役、代表取締役、監査役、取締役会などの機関を設置するか否かを判断することが必要です。
取締役会等の機関を設置しないことももちろん可能で、代表取締役1人だけで設立することも可能です。
小規模な会社にはシンプルな組織が適しており、不正防止や業務効率化のために適切な内部統制を確立することが重要です。
変化するビジネス環境に対応できるよう、柔軟な機関設計を心がけ、必要に応じて組織を変更できる体制を整えることが望ましいです。
決算期
日本では、最も一般的な事業年度は「毎年4月1日から翌年3月31日まで」です。
これは、国や地方公共団体、大企業などで広く採用されています。
しかし、事業年度は自由に設定することができるため、新しく設立する会社の業種や業態に合わせて決めることが重要です。
また、3月決算を選んで2月に会社を設立した場合、初年度の事業期間はわずか1ヶ月しかないという事態になることが考えられます。
設立後の忙しい時期にすぐに決算準備をしなければならず、これは非常に煩雑です。
これを避けるためにも、事業年度を設定する際には、設立予定の会社の業界や業種の繁忙期を避けることが重要です。
繁忙期を避けて決算期を設定することで、決算手続きをスムーズに進めることができます。
まとめ
会社設立は多くの準備が必要ですが、商号や事業内容、発行株式数、出資金の金額、役員構成など、重要な要素を慎重に決定することで成功の確率を高めることができます。
しっかりとした計画と適切な判断をもとに、会社設立を進めましょう。