会社が従業員のために賃貸物件を借り上げ、一部の家賃を負担することには、多くのメリットがあります。
この記事では、その具体的なメリットと注意点について詳しく説明します。

従業員に家賃手当を支給する場合と社宅を提供する場合の手取り額の比較

従業員に家賃手当を支給する場合と、会社が住宅を借り上げて社宅を提供する場合、従業員の手取り額にはどのような違いが生じるのでしょうか?
それぞれのケースの特徴と手取り額への影響について詳しく説明します。

家賃手当を支給する場合

家賃手当は給与の一部として支給されます。
そのため、家賃手当は所得税や住民税、社会保険料の計算対象となります。
その結果、手当の額から税金や社会保険料が差し引かれ、従業員の手取り額は減少します。

社宅を提供する場合

会社が住宅を借り上げて従業員に提供し、従業員は「社宅使用料」(家賃の一部)を支払います。
社宅使用料のみが給与から控除され、会社が負担する部分は給与として計上されません。
その結果、家賃手当を支給する場合に比べ、給与(課税所得)が減少するため、所得税や住民税、社会保険料の負担が軽減されます。
結果として、手取り額は家賃手当を支給される場合よりも増加します。
また、社会保険料の計算対象額が減少するため、会社と従業員が負担する社会保険料が減少するため、双方にとってメリットが生じます。

税務上の注意点

家賃全額を会社が負担すると、給与課税の対象となる可能性があるため、一部は従業員に負担してもらう必要があります。
従業員が負担すべき金額の具体的な計算方法については、以下の通りです。

固定資産税の課税標準額が分かる場合

次の3つの合計額で従業員の負担額を計算します。

1. 建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
2. 12円×(建物の総床面積(平方メートル)/3.3)
3. 敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

固定資産税の課税標準額が分からない場合

賃貸物件の社宅家賃として、支払家賃の半分以上を従業員から受け取れば問題ありません。
固定資産税の課税標準額は、固定資産税の納税通知書に記載されており、市区町村の固定資産税課に賃貸契約書を持参すれば閲覧できます。

年収に影響を与える点に注意

注意が必要なのは、家賃負担をしてもらうケースと、住宅手当を上乗せして支給するケースにおいて、源泉徴収票に記載される年収に差が生じることです。
住宅購入を考えている従業員にとっては、住宅手当を上乗せして支給してもらったほうが嬉しい場合もあります。
今後この制度を導入する際には、従業員に十分な説明を行ったうえで進めることが重要です。

まとめ

会社による賃貸物件の借り上げと家賃負担は、給与課税の回避や社会保険料の節約といったメリットがあります。
しかし、税務上のルールを守るためには従業員に一部負担してもらう必要があるため、負担額の計算を正確に行うことが重要です。
また、従業員の年収や住宅購入に対する影響を考慮し、適切な説明と選択肢を提供することが求められます。
これらの手続きを適切に行うことで、会社と従業員双方にとって有利な制度を活用することができます。