RSUというものをご存知でしょうか。
主に外資系企業でボーナスの一部として普及しているもので、正式名称はRestricted Stock Unit(リストリクテッド・ストック・ユニット)と言います。
RSUは、企業が従業員に対して与える株式報酬の一種で、従業員は、一定の勤続条件を満たすと株式をもらうことができます。
有名どころだと、Microsoft、Amazonなどがこの仕組みを採用しており、株式をもらう側としては非常に嬉しい制度なのですが、納税が多額に発生するケースが多い仕組みにもなりますので、注意が必要です。

RSUの利点

そもそも、なぜ自社株を従業員を付与する会社があるのでしょうか。
会社の株式を従業員に渡すことは、いくつかのメリットがあります。

1. インセンティブの提供
RSUは従業員に対して会社の成功に貢献する強力なインセンティブを提供します。従業員が会社の株式を持つことで、会社の業績向上や株価上昇が自身の利益にも直結するため、従業員はより積極的に会社の成功に貢献しようとします。

2. キャッシュフローの管理
現金による給与の代わりにRSUを付与することで、企業は現金の支出を抑え、キャッシュフローを管理しやすくなります。これは特にスタートアップ企業や成長段階にある企業にとって重要です。

3. 離職防止
RSUにはベスティング期間が設定されているため、従業員が一定期間会社に留まる動機付けとなります。これにより、優秀な人材の離職を防ぐ効果が期待できます。

4. 株主価値の共有
RSUを通じて、従業員は会社の株主の一部となり、株主価値の共有に参加します。これにより、従業員と株主の利益が一致し、会社全体の成功を目指す統一感が生まれます。

このように、給与の代わりにRSUを付与することには、企業側にとって多くの利点があるのです。
もちろん、株価が跳ねれば、従業員側も大きなメリットを享受できます。

RSUの一連の流れ

RSUに係る税金を理解するためには、まず、従業員がどのような経緯を経て株式を取得できるのかを把握しましょう。
RSUには3つのフェーズが存在し、Grant(付与)、Vest(権利確定)、Sell(売却)の3つのイベントが存在します。

Grant(付与):入社、その他の一定のタイミングで将来株式を取得することができる権利を従業員に与えるイベント。この時点では株式は従業員のものではなく、あくまで将来株式を受け取ることができる権利を受け取ったということにすぎません。

Vest(権利確定):一定の勤続期間を達成すると権利が確定する。つまり、株式が正式に付与され、株式が従業員の所有物となります。

Sell(売却):Vestされた株式は従業員のものですので、株主の好きな時に売却することが可能です。売却することをSellと呼びます。

税金が発生するタイミング

RSUを受け取る側としては、株式を取得できるため非常に嬉しい制度なのですが、税務上、大きなリスクがあります。
なぜかと言うと、現金預金が入金されないにもかかわらず、Vestのタイミングで多額の納税が発生するからです。

日本では、給与や賞与の支払を受ける際、源泉徴収された後の金額が振り込まれます。
したがって、税金の精算は振込を受けた時にはほぼ終わっています。
しかし、RSUにおいては、Vest時に株式が割り当てられますので、現金預金の入金はありませんし、かつ税金が源泉徴収されることもありません。
つまり、銀行口座には一円もお金は入りませんが、多額の税金を払わなければいけなくなる可能性を孕んだ仕組みと言えます。
株式がVestされた時点ですぐに売却して現金化すれば、さほど納税に困ることはないのですが、将来の値上がりを期待して株式保有し続けるケースは少なくありません。
ただ、どの時点でどのような税金が発生するのかを把握しておけば、対策も打つことは可能ですし、納税資金が足りないという事態は避けることはできます。

税金発生タイミング1

RSUには、Grant、Vest、Sellの3つのフェーズがあるとお伝えしましたが、Grantの時点では、税金は全く発生しません。
この時点では株式は従業員のものではなく、将来的に株式をもらえる権利を受け取っているだけにすぎないためです。

納税義務が発生する最初のタイミングは、Vest(権利確定)の時点です。
このVestの時点で、従業員の証券口座に株式が割り当てられ、株式が従業員のものになります時を指します。
価値のある株式を受け取るということは、当然に納税義務は発生します。

税金発生タイミング2

Vestされた株式は、従業員の意思で売却することが可能で、株式を売却したタイミングでも、税金が発生します。
計算方法は、売却して得たお金から、株式の取得費を差し引いて計算します。株式の取得費はVestされた際の市場価額を使用します。
例えば、100ドルでVestされた株式を120ドルで売却した場合には、20ドルの譲渡所得が発生したと考えます。税率は20.42%です
Vest時点、Sell時点の課税関係をまとめると、以下の図のような考え方になります。

さいごに

RSUは株式を従業員が取得できる制度ですので、従業員にとっては非常に嬉しい制度ですが、納税金額が本当に大きくなります。
Vestされてすぐに株式を売却し、納税資金を作れば問題になることもありませんが、株価上昇を期待して保有し続けることを選択する方も少なくありません。
株価が上昇すればよいのですが、株価が下落した場合には悲惨な結果になりかねないので、まずは専門家に問い合わせることをお勧めします。